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理事長所信
 

第58代理事長 杉山 隆寛
はじめに −我が世の春よ、永遠に−

 日本はいま、最後の好機と言える時を得て、国家再建の戦いに挑んでいます。もうこんな機会は、二度と巡ってこないかも知れない。経済大国としての国際社会におけるポジションがじわじわと後退する一方、1000兆円を超える政府債務を抱えた国家財政の立て直しは喫緊の課題となっています。一方、東日本大震災を受け、国民一人ひとりに突きつけられる形となった原子力エネルギー問題と、代替エネルギー捻出のための交換条件となり、対応が後回しとなりつつある環境問題の同時解決は、日本経済再生の逆ベクトルを生じかねない可能性を含み、舵取りの慎重さが求められています。こうした、国家を挙げて取り組まなければならない課題解決に対して、いちばんの不安要素であることが、日本国民の「無関心」であるという皮肉さです。日本人の国家にある問題に対する意識の低さは、 戦後教育の成れの果てであるという議論の範疇を超えています。衣食住に足る経済的な豊かさは、日本人の美しい精神性をその代償として奪い、国民に蔓延する「そうは困ってないから、心配ないでしょう」という、ここだけは不思議と、親方日の丸的な依存精神を根付かせてしまいました。私は、危機感を煽るところから、何とかしなければいけないと動機を醸成する考え方を良しとしません。しかしながら「そうは困っていないから、心配ないでしょう」という無関心さの蔓延は、国家の未来を描いてゆく上で、少々手ごわい問題であると考えています。

 結局のところ私たちは、我が世の春を謳歌しているのです。多くの国民と同様、私も「このままではまずい」と薄々は感じながらも「今のところは大丈夫だから」という甘えから抜け出すことができていません。復活を期さなければならない日本経済、逼迫する国家財政、進むべき道が定まることのない環境エネルギー問題、明るい未来を描くことのできない地方経済、無関心さが蔓延し人の心の何たるかが分からなくなりつつある日本人。それぞれの課題は、今のところは、まだ安全圏内にあるのかも知れません。しかしながら、子どもたちが責任世代を担う時代となると少々怪しいということは、多くの大人たちが薄々気づいているはずです。私が息を引き取り、愛する我が子が、そのまた次の世代を担う子を抱いた時に、我が子はこう言います。

  お父ちゃん
  最初からこうなると分かっていたのなら
  どうして手を打ってくれていなかったの

 親として、人生の先達として、明るい豊かな社会の実現を願い青年の運動を行ってきた 一人の人間として、自分の子どもにこんなことを言われるのは、言葉にすることができな いほど悲しいことです。せめて、私たちが産み落とした世代が生きゆく時代まで責任を持つことが、今を生きる私たち青年が果たすべき使命です。だから私たちは、責任世代なのです。次の世代にも、我が世の春を謳歌させてあげたい。


2万人のコンベンションが示した未来

 公益社団法人日本青年会議所第59回全国会員大会小田原・箱根大会。「襷で繋げ、報徳の精神こころ!」をスローガンに掲げ、2010年9月30日より5日間に亘り開催された本大会より、5年の時を経ることとなりました。この大会は、一体何をこのまちに遺したので しょうか。大規模なコンベンションの主催を本業としているわけではない、言うなれば素人集団が創り上げたこの大会は、知識・経験の浅さから、主に運営面における多くの課題を生み出してしまったことは間違いありません。未知なる挑戦でした。年間2500万人 を超える観光客を誇る、小田原・湯河原・箱根・真鶴という地域にとって、初めての挑戦だったのです。「青年たちは、新しい歴史を創ったのだ」と評価して頂ける時代はやってく るでしょうか。私たちは、活動エリアである小田原・湯河原・箱根・真鶴を中心とした域内の交流人口増加を目指して運動を展開しています。その中で、この地域で2万人のコンベンションを誘致開催した実績は大きい。そしてこの大会で発信した「報徳の精神」は、 首題で提起しました私たち日本人が失いつつある「美しい精神性」そのものであり、私たち日本人の在るべき姿を、この地域から日本へ、世界へ発信することに成功しました。この大会を開催した意義を5年という節目の年を以って正確に評価検証を行い、その結果を大会の構築に携わって頂いた皆様と共有させて頂きます。

 そして私たち青年は、次世代を担う子どもたちが大人になった時、思う存分に生き抜くことの出来る時代を遺してあげるために、この地域の未来像を描いてゆきます。そのプロセスにおいては、長い時間軸を見据え、この地域の未来を語る議論を巻き起こし、理想を確立することにあります。時代の流れは、人の死に起因する不連続を生み出します。その 不連続に、連続性を生む役割を「共に紡ぎあげた理想」に果たしてもらわなくてはなりません。目前にある課題にばかり囚われることなく、共通の理想を描き、私たちが見ることのかなわない未来に向けて、青年らしい大いなる議論を起こしてゆきます。


未来のために、地域を経営する

 地方の時代にはじまり、地方分権・地域主権と言われて久しくなります。政治・行政の側面においてそう示されることが多いかも知れませんが、ひとつの地域に生きる者にとって、現実は、自分の地域は自分で守ることを求められている、ということです。翻って考えれば、地域の未来という点においては国家を頼りにすることはできない、そう捉えることが自然でしょう。この地域に賑わいをもたらし、魅力ある地域にしてゆくためには、こ の地域を愛する人々自らが、地域と主体的に向き合うことが大切です。地域を愛する人々が、一丸となって地域を経営することで、人々の血が通った地域が創造されてゆきます。 その先頭に立つ私たち青年は、このまちに息づくアイデンティティ、このまちの価値観を融合し、地域を守り抜く独自の戦略を構築する必要があります。私たちの活動エリアである小田原・湯河原・箱根・真鶴は、世界有数の観光地であると同時に、多くの人々が交わりの中で賑わい、発展を遂げてきました。人の交流要素のうち「観光」という一面で見れば、この地域のライバルは、京都をはじめとする国内を代表する観光地ばかりではなく、 パリ・ハワイ・香港・イスタンブールといった世界を代表する観光地であります。世界のマーケットは、次の渡航先を、どこの都市あるいはリゾートで過ごすかを考えています。 交流人口増加を目指すこの地域にとっては、一次選考段階より、世界を相手にする土俵に乗らなければならない。そういった意味においては、インバウンドの動機が、単なる観光(sightseeing)から余暇を楽しむことを目的とした、ツーリズム(tourism)或いはバケーション(vacation)、また具体的な渡航目的を持った国際会議(international conference) や医療観光(medical tourism)などへと多様化をしている中で、この地域がどのような提案を世界に対して発信してゆけるかが地域活性の武器となってきます。

 私たち青年は、この地域特有の文化や自然、伝統や歴史、そしてこの地域ならではの人々の心といった地域の魅力ある資源に、敬意を持って美しく正対し、地域を経営する資源にしてゆく運動を展開しなければなりません。そして、地域が一丸となって地域を経営する、 その運動の先駆けとなるのです。課題に対する間口を広く持ち、長期的な視点で未来を展望し、場当たり的な特効薬探しに留まることのない議論を巻き起こす。そして、独りよがりな考えに囚われることのなきよう、地域と広く対話を繰り返し、このまちの未来を思い活動する人々との連携を深めてゆきます。また本年は、統一地方選挙の実施年でもあります。地域一丸となった地域経営には、官民の連携は必須条件となります。行政・関係諸団体との連携を深めてゆくと同時に、統一地方選挙にあたっては、公開討論会をはじめとする、市民の政治への参画意識を高める運動を展開して参ります。


道徳にある美しさ

 海洋国家である日本と、そこに生きる日本人が、大和王朝建国以来、万世一系の天皇家を守り続け、明治政府樹立を誘発するに至った開国をはじめ、欧米列強と接触する国事を乗り越え、今も国体を存続することができていることは、歴史における奇跡であると言われています。このことは一方で、必然であったと言うこともできるのではないでしょうか。 その主役は「日本人の精神性」です。日本人は、日本人の精神性を以って、時に攻める局面において、時に守る局面において、高貴であったと歴史が伝えています。森羅万象、自然界のあらゆるものに神が宿るとし、万物に崇敬の念を以って生きてきた私たち日本人。 そして、自分一人が良ければ良しとする傲慢さを恥とし、他を思いやり、富を分け合い、 苦を分かち合う。日本人にとって、道徳心は民族の誇りであり、心の芯とすべきものであ ります。しかし首題に掲げた通り、その精神性は時代とともに失われつつあります。精神の喪失は民族の破滅をもたらすでしょう。今ならばまだ間に合う、私たち日本人は必ず取り戻すことができると考えます。なぜそう信じることができるのか、私たちは皆、本当は「そう生きたい」と願っているのではないかと考えるからです。無関心に溢れる社会に包まれ、古き良き日本人としての姿を体現することが気恥ずかしい、あるいは、時代錯誤だと見られる風潮があるのは事実と言えます。しかし私たちに、道徳心という美しい心が生きていることは確かなことなのです。

 この地域は、二宮尊徳生誕の地であります。報徳の精神は、これまで述べてきた我が国の現状にあって、今こそ見つめ直すことが求められる尊き学びであると考えます。国際社会において繰り広げられる国家・民族・宗教間におけるパワーゲームには、いつしか限界が訪れることは、歴史が証明しています。日本が成熟国家としての王道を歩み、秩序ある国際社会の構築に貢献してゆくためにも、私たち責任世代が主体となって、報徳の精神を次世代へと継承してゆかなければなりません。学校・地域・家庭における教育の一番の根幹となりうる教えが道徳であり、子どもたちに対し、地域の大人たちの誰もが実践できる教育、それが道徳なのです。私たち青年は、まず自らの在り方を道徳の心を持って見つめ直し、子どもたちの範となる姿に正さなければなりません。そして、いかにして次世代へと尊き精神を継承するかを考え、実践する必要があります。そして次世代を担う子どもたちの教育に対し、熱心に向き合う地域の皆様との対話や連携を図りながら、青年会議所が今の時代の教育現場において果たすことのできる役割が何であるかを見出し、地域教育を 共に担いうる方向性を見出してゆきます。

地域のお役に立つことができる青年を育て上げる

 地域の未来を共に描くことのできる人材が、このまちに一人でも多く存在する。地域にとって望ましい姿です。これまでの成長経済下においては、それぞれが属する企業の発展を考えていれば、他の分野は他の企業が、公共経済は行政に任せておけば良かった。しかし今の時代は違います。ひとりの人間が、ひとつの企業が、地域全体を見ながら物事を決定し、事業を構築してゆかなければなりません。こうした思考レベルの新たなるシフトチェンジは、簡単に行うことのできるものではないでしょう。ゆえに、会社の規模や事業の枠組みを超えた、間口の広いイマジネーションの爆発を起こし、積極果敢な行動に移すことのできる勇気を持った地域人材を、一人でも多く生み出してゆく必要があります。これまで述べてきた様々な事象を解決に導く可能性を探り、実践してゆくのはそうした人材以外になく、その中でも「そろそろ自分たちの出番か」と感じている青年に期待されるところが大きい。しかしながら、地域においてこうした青年をはじめとする人材の育成を図る、 頼りがいのある社会の教育機関は少なく、個々の自主訓練に委ねざるを得ない実情があります。地域の人々が、まずは仕事において、そして地域行事への参画、学校教育へのサポ ートなど、様々な場面で愛する地域への貢献を図り、地域活動に携わることはできます。 しかしながら、一定の時間を費やし、作業として貢献する段階までに留まっている、というケースが多くを占めているのではないでしょうか。

 青年会議所は、そうした尊い行動の先に、どうすれば愛する地域がもっと良くなるのか、その方策に考えを巡らせ、実践できる人材を地域に還流する役割を担ってきました。地域の良さを深く知り、同時に不足に触れ、これから自分たちの大好きなこの地域をどうしてゆくか、この地域に生まれ育った子どもたちをどう育んでゆくか、こうした長期的な視野でまちの未来を描き、仲間との心の繋がりを大切にし、謙虚さと強さを持って地域を説得する人材を、一人でも多く育成してゆくことは、これからも果たすべき重要な役割となります。こうした意味において、青年会議所が主催する事業を通じ研鑽を積むことに留まることなく、地域のお役に立てる人材として育て上げるため、人間力を高める研修を強化して参ります。同時に、こうした人材を一人でも多く地域にお返しするためにも、組織規模を拡大してゆく必要があります。そのためには、青年会議所の運動にご賛同下さる方を、一人でも多く増やしてゆく必要があります。会員の拡大と育成は、小田原青年会議所という組織のために行うのではなく、青年会議所会員が属する地域の未来のために行うという意識を胸に行って参ります。


組織を統治する

 青年会議所は人材を還流させながら、組織の進化と成熟を図る、高度な連続性を志向した運動体です。ゆえに、自らが目的とする運動を起こし、事業として推し進めてゆくことは、その組織が志向する存在意義そのものであり、自然と最大限のエネルギーが注ぎ込まれる場所となります。一方で、その目的に向けた運動が、組織の理念に準じたものであるか、その時代の社会の要請に添うものであるか、法令を遵守したものであるか、その統治の妥当性を図ることも組織として同時に実施しなければならないことです。事業展開の中で、こうした統治に関わる基準が緩和され、瞬間的に容認されることは、時に必要なことなのかも知れません。しかしながら、こうした瞬間的に実施された例外が、組織の統治力を悲しいほど衰えさせることもあります。組織を持続発展可能なものとするために、公益社団法人格を有する組織として、組織統治の在り方を徹底的に検証し、継承すべき事項を守りながら、最適な手法を施すことが必要であると考えます。


結びに −青年たちよ−

 年齢や性別、所得や思想を超えて、心をひとつにこの国を守らなければならない時代を迎えています。私たち青年が、まず認識しなければならないことは、決して現実から目を背けてはならないということです。見て見ぬふりをしていれば良かった時間は、もう使い果たしてしまいました。私たち青年が先頭にたって、幾久しく、我が世の春を謳歌することができる本当の豊かさに満ちた美しい社会を、次世代に遺す役割を果たします。世の中は、様々な思想、個性、能力がある人が集って形成されています。この多様性が、地域をつくる武器になります。経済成長の過程のなかで、日本人は、個性を閉じ過ぎてしまったのではないでしょうか。でも、時代は新たな段階を迎えようとしています。こうした局面においては、それぞれが自分の得意とすることを思う存分に発揮することが期待されます。 大丈夫、あなたの弱点は誰かが補ってくれます。己の不足を知り、その不足を人が助けてくれた報いに感謝することで、人間として成長するのです。仲間を信じて、思う存分戦おうではありませんか。

  お父ちゃん
  幸せに暮らしています
  ありがとう

 我が子が墓前で手を合わせ、私に報告してくれている。そんな明るい豊かな社会を実現することが、私たち青年の使命であると信じています。明治維新、第二次世界大戦後と、我が国は二度も、国を作り替える偉業を成し遂げて参りました。その運動の先陣をきったのは、志あふれる青年です。私は、今の世を生きる青年の先頭に立ち、率先垂範・行動第一を以って職務を全うすることをお誓いし、公益社団法人小田原青年会議所2015年度 理事長としての所信と致します。