理事長所信


2023年度 理事長所信
田中 雅久

【はじめに】

Be the Shine ~輝きを放つ起点となろう~

 私は、2015年に公益社団法人小田原青年会議所(以下 小田原青年会議所)に入会をさせていただきました。そこには、互いに研鑽し高め合い強い絆で結ばれ、一人ひとりが輝きを放ち真剣にこのまちを良くしようとする多くの先輩の姿がありました。父親の死をきっかけに小田原青年会議所に入会した私は、その先輩方の輝きを通じて幼き頃に抱いていた父親への感情を思い出しました。『オヤジかっこいいな』愛するこのまちのために真剣に、そしてなにより熱心に取り組む父親の背中に憧れると共に、こんなに格好良い大人たちがこのまちを作ってくれているのだと感謝すると共に、将来は自らもあんな風に輝きを放つ大人になりたいと感じました。幼き頃に感じた気持ちを小田原青年会議所の先輩方が思い出させてくれたのです。いつの日も、輝きを放つ起点となり、暗闇を切り拓くリーダーとしてその光で周りを照らし、進むべき道を示してこられた先輩方の様に私はなりたいと心底思えたのです。入会から9年の歳月が流れ、多くの役職を通して様々な経験をさせて頂きました。今の私は、私が憧れたあの先輩方のようになれているのだろうか、自らが輝きを放つ起点となり周りを照らし、周囲に希望を与えられているだろうか。今私がこのまちのためにできることは何だろうか。私は、今まで脈々と受け継いでこられた小田原青年会議所の、64年間にわたり受け継がれてきた襷を受け取り、先輩諸兄姉から受けたご恩を次代へとつなげていくことが大切であると考えました。自らが輝きを放ちながら先頭を走り、青年会議所会員全員が輝きを放つ集団になりたいと思っています。昨年主管させていただきました第35回国際アカデミーin小田原・箱根の開催テーマである『Pay it forward』は恩送りという意味です。頂戴した恩をお返しするのではなく、次の世代に送り続けることが大切であると私はこの組織で教わりました。この連鎖こそが次代の担い手を多く創出し、持続可能な強い組織の礎を築き上げ、より良いまちへと発展し続けるために地域の皆様から必要とされる小田原青年会議所に成長していくのだと思います。地域関係諸団体の皆様から、また、先輩方から、そして地域住民の皆様から頂戴した多大なるご恩をこれからの未来へと送っていくことが、私の役目だと考えます。新型コロナウイルス感染症の影響やテクノロジーの急速的な発展により、時代は大きく変化しました。今までの常識がいつの間にか非常識に、そして、価値観も多様になりました。2023年度は、小田原青年会議所創立65周年に当たる年です。新たに時代に即した形で光り輝く未来を描いていくことが、恩送りの第一歩と捉え、小田原青年会議所のリ・スタートの年にして参ります。

【65周年の節目】

 1958年5月16日に、このまちを愛する若者たちの高き志により139番目の青年会議所として設立されました。以来、高き志と並々ならぬ努力の繰り返しにより築いてこられた実績のもと、現在の小田原青年会議所が存在しております。小田原青年会議所は64年の長きにわたり目まぐるしく変化する社会情勢においても常に時代に即した柔軟な発想と熱い想いで困難に立ち向かってきました。我々が今日までJC活動に邁進し、まちづくりを通じて仲間と共に研鑽し続ける日々があるのも、先輩諸兄姉のご功績があったからこそ今の小田原青年会議所があり、私は、連綿と受け継がれてきた襷をお預かりする者として、私たちが時代や社会の変化に柔軟に対応し、地域関係諸団体、そして、地域の皆様に必要とされる運動を展開し、期待される団体へと成長して参ります。青年会議所は、会員一人ひとりに多くの成長の機会を提供するために毎年役職が変わる単年度制という仕組みを採用しています。また、組織の大きな運動の方向に一貫性をもたせるために、小田原青年会議所では地域ビジョンを定めています。新型コロナウイルス感染症や、目まぐるしい勢いで進化したテクノロジーにより時代が大きく変化した今、創立70周年に向けて今後5年間の運動の方向性、そして、向かうべき未来を見定めていくために、具体的なアクションプランを策定して参ります。

【地域】

 私たちの活動する小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町は、豊かな自然や歴史・文化に囲まれた地域です。そして、小田原市は今や世界的に有名となっているアニメ機動戦士ガンダムの原作者である富野由悠季氏出生の地でもあり、箱根町はアニメ・新世紀エヴァンゲリオンの舞台である第三新東京市のモデルとなり、国内外から注目されています。また、より良いものへと成長を願い活動をされている行政の皆様、そして、関係諸団体の皆様、さらには地域住民の皆様こそまさにこの地域の魅力となる根源ではないでしょうか。時代が大きく変化し、多様性溢れる今だからこそ全ての皆様と共に「地域をより良くしたい」という根源に立ち返り、共にこのまちに輝かしい未来を迎え入れるために協力していく必要があるのではないでしょうか。昨年に小田原青年会議所は国際アカデミーを主管させていただきました。国際アカデミーとは、国内をはじめ、世界105の国や地域から次世代を担うリーダーが集う、国際青年会議所公式研修プログラムの一つです。その主管の際には、行政の皆様、関係諸団体の皆様、そして地域住民の皆様方より多くのご協力をいただくことによりこの地域の魅力を国内に留まらず、世界各国へ発信することができました。しかし、強い発信でも一過性で終わらせてしまえばただのイベントにとどまってしまいます。国際アカデミー同様により良い効果もたらし、また、継続させるためには、この経験を活かし、継続的に地域の魅力を発信し続けることが必要であると共に、この地域の魅力や地域資源の可能性について、地域住民の認識をより深めていくことが必要不可欠です。地域を愛する多くの皆様と我々青年会議所会員一人ひとりが、柔軟な発想により従来とは異なった視点から物事を捉え、課題にアプローチしていくことで、地域の魅力が住民に伝わり、地域愛が育まれ、より輝く地域となることでしょう。

【教育】

 教育は国家百年の計といわれ、一人ひとりの生き方や幸せに直結するとともに、国や社会の発展の基礎となる重要な要素です。教育の対象者イコール子どもというイメージがあるかもしれません。しかし、子どものみならず、私を含む子を持つ親や保護者も同時に学んでいくことで、豊かな社会の実現に近付くのです。私は、多くの子ども達により良い未来を残してあげたい。そのために必要であると考えるのは、先に申し上げた通り子を持つ親や保護者の成長であり、理解であり、共感頂ける環境を整備することであると考えます。では、より良い未来とは何か。私が考え得るより良い未来とは、子ども達がなりたい自分を諦めることのない未来です。教育に対して現在問題となっている一つが貧困による教育の格差です。現在日本では7人に1人の子供が貧困環境にあり国内ではおよそ280万人と言われています。親子2人世帯が月に約14万円以下で生活している状況を貧困世帯と指し、貧困を理由に子どもは教育や社会経験の機会を失ってしまい、結果として学力不足の子どもや精神的に未成熟なまま大人になり、低所得あるいは所得がない生活を送るケースが多いため貧困は連鎖してしまうと言われています。経済的な理由で塾や習い事を諦めた家庭は70%弱にものぼり、3割の高所得世帯の子ども達との偏差値の差は顕著に現れております。また、我々が幼少期の頃は自治会行事などから多くの機会を提供していただき、学を得たものですが、近年ではそもそも自治会に属さないご家庭が増えており、学校以外での学びの機会はますます減っている業況です。これらのことから、子ども達の未来に光を灯すためには多くの学びの機会を提供することが効果的と考えます。子ども達だけでなく親や保護者に共感頂ける環境を整え現状に気づいて頂くきっかけを与えることだと考えます。我々は勉強を教え、学力を上げてあげることはできないかもしれません。もちろん、金銭面を支えることもできません。ですが、我々にはJCならではの多くの成長の機会が提供できます。昨年、第35回国際アカデミーin 小田原・箱根を主管することにより我々自身も多くの機会で今もなお成長を続けております。未来を担う子ども達に、そして、同時に子を持つ親や保護者たちにも未来を諦めない希望の光を掴んでいただくために多くの機会を提供していきたいと思います。

【組織・人財】

 戦後焼け野原であった我が国を復興させるという責務を担い、当時の青年は一致団結し、青年会議所を立ち上げました。その後も、沢山の課題・社会問題に向き合い、より良い社会にしていこうと運動を推進してきました。近年では新型コロナウイルス感染症の影響により世界は混乱し、経済的にも人々の生活に重大な影響を及ぼしました。今こそ、アフターコロナに舵を切りこの地域の復興に尽力することが私たち青年の責務ではないでしょうか。この組織には歴史があります。その歴史の中で、敬愛して止まない先輩諸兄姉から脈々と受け継がれてきた、JAYCEE魂が私たちにも宿っています。この熱い魂と高き志を胸に、果敢に行動していくリーダーが社会にインパクトを与えていきます。我々青年会議所は、多岐わたりより良い変化を与える力を養うために発展と成長の機会を与えることを目的としております。その目的や理念に共感し、一人ひとりが考えて、考え抜いて、一点の曇りなく、自信をもって運動を推進していく。そんな活気に満ち溢れ輝いた人財の集合体でありたい。出遅れた仲間には歩調を合わせ、痛みを共有し、すべての仲間が脱落することなくゴールテープを切る。青年としてのゴールテープを切った時、それぞれが地域のリーダーとして、新たなスタート地点に立ち、それぞれの場所でさらに輝くとき、その姿を見た人々の意識変革に繋がることでしょう。動きを止めず、一人ひとりが光源となり、地域を照らす。より明るく照らすために、より多くの同志を集め、組織拡大を推進してまいります。

【結びに】

 人は人でしか磨かれない。日々活動していく中で多くの人と出会い、その過程で様々なことを学び、成長させていただきました。青年会議所の多様性溢れる仲間たちは、私には想像もできない発想やとてつもない行動力でその度に私に刺激を与えてくれます。自身の常識の範囲で物事を見ていただけならば決して成長しないことを教えてくれます。互いの違いを否定し、拒絶するのではなく、違いを受け入れ、理解し合える仲間たちと共鳴することで、自身の可能性を広げ、より良い自分へと成長することができます。時に、健全な劣等感を感じ、自身が慢心することなく突き進んでいける組織、そんな輝きを放つ魅力的な組織であるならば、きっと多くの人々に共感を呼び、自然と入会したくなる組織となるでしょう。そんな仲間たちと共に、私たちはこの先も成長し続けて参ります。共に成長し、共に輝きを放つ起点となり、共に光り輝く未来へと進んでいきましょう。私は、小田原青年会議所の先輩諸氏が築いてこられた功績に感謝し、受け継がれてきた襷を受け取るものとして責任と自覚を持ち、理事長職をお預かりすることをお誓い申し上げ、公益社団法人小田原青年会議所2023年度第66代理事長としての所信とさせていただきます。